猫の尿道閉塞
猫の尿道閉塞
秋から春にかけての寒い時期になってくると雄猫の膀胱・尿道結石(結晶)による頻尿・血尿、最後には『尿道閉塞』に至って来院する猫ちゃんが多くなります。
寒くなると飲水量が減り、トイレに行く回数も少なくなり、膀胱内に尿が留まっている時間が長くなるため結石(結晶)が作られ易くなると思われます。その他にも肥満、食生活、体質など様々な要因が絡んできます。
治療としては軽度であれば抗生物質の投与と食生活の改善(処方食)が中心で、重度になれば、尿道カテーテルの留置による尿排出の確保、膀胱・尿道切開、会陰尿道瘻造成術等治療も複雑化して、猫ちゃんにも負担が増大してきますし、命に関わってきます。
先ずは尿道閉塞の解除
上記は当院にある猫で使用する尿道カテーテルの一部です。
特に一番下にある金属製のものは最終手段で使うのですが、結構役に立ちます。金属製なので当然力加減を間違えると尿道を傷つけるどころか穴を開けてしまうのですが、不器用にやると柔らかめのカテーテルでも同様のことが起こります。
これらを駆使してなんとか尿道に詰まった物を膀胱へ押し戻します。
閉塞解除ができなければ手術しか選択肢が無くなります。
はじめてこの病気にかかり、ハルどうぶつ病院に来られた方にはしつこいくらいに食生活の改善をお話ししますので、再発率が低いようです。
最近では泌尿器用の処方食も数種類あり、味覚に敏感な猫ちゃんでもなんとかなるようになりました。難しいのは再発を繰り返してから来院された猫ちゃんです。
繰り返せば繰り返すほど尿道は炎症を起こしただでさえ細いのがさらに細くなり、フニャフニャの一番細い尿道カテーテルがやっと通る程度だったり、場合によってはさらに細い、静脈内に使用する特殊なカテーテルでなければ通せない猫ちゃんもいました。
こうなると外科的にペニスをとって尿道を広げる手術を考慮しなければならなくなりますが、処方食が少なかった昔に比べ現在では充実してきていますので尿道を広げる手術を即行う必要性は少なくなっています。
実際、当院で尿道を広げる手術をするよりも(食生活の話をしつこくするから?)知り合いの病院に手術をやりに行く方が多いくらいです。
会陰部尿道瘻設置術
雄猫において、膀胱・尿道結石等により排尿ができなくなったり、尿道カテーテルによる尿道の開通もままならない症例に実施されます。上記のように昔に比べフードの改善や飼い主さんの意識の向上により早期発見早期治療ができるようになったため、このような手術を行わなければならない猫ちゃんはかなり減りましたが、たまに知り合いの獣医さんからの依頼で行うことがあります。
手術方法としては、
①ペニス部分を切除後尿道を直接皮膚に繋げる方法。
②①の変法でペニスの粘膜を利用して、尿道を繋げることにより開口部の閉鎖を防げる方法。
③尿道を腹部の皮膚に開口する方法。
通常はこれら3つのどれかが選択されるのですが、近年は②の方法がメジャーになっています。というのも、①の方法では尿道開口部が閉じやすく術後・予後管理が大変でした。しかし、私が依頼されることが多いのが、②の方法で再発したり、先天性の異常のため①の方法に切り替えて手術を行うことが多いです。従って、②の方法のみの手術方法(こちらの方が術式も楽だし、術後が安心)だけでは対応できないこともあります。
この写真はペニスが尿道の奥深くに埋没していた非常にまれな症例です。
膀胱結石から尿道に結石が詰まった症例の手術
尿道を露出したところ
これは尿道に結石がたんまり詰まっていた症例です。これではいくら尿道カテーテルで結石を膀胱に戻そうとしても戻るわけがありません。
ペニスの粘膜を反転して尿道と接続。
現在の状態。尿道がよく見えませんが、昔からの尿道を皮膚に縫合する術式より優れているのは、
尿道の皮膚開口部が狭窄することが無い。開口部付近の皮膚が荒れることも無い。
ほぼメスのような構造になる点など。