犬回虫
犬回虫
成虫は白色あるいは黄白色を呈し、体長はメスで5~10センチ、雄で4~10センチあります。
頭部は腹側にやや湾曲し、頭部には幅が狭く長い頸翼があり、その横条は粗いです。
メス虫では陰門が虫体の前方1/4の位置に開口、雄虫の交接刺は2本で同形同大、有翼。
虫卵は不透明でほぼ球形を呈し、その径は65~80μmです。
発生動物
犬、特に幼犬に多発します。
疫学
全世界に分布し、犬における犬回虫に対する抵抗性は犬の発育、加齢に伴って増加し、腸管寄生の成虫は次第に自然排虫されることが多く、一方、幼犬では犬回虫が垂直感染(胎盤感染、経乳感染)することや、年齢抵抗性が未発達なことから、成犬に比べ成虫寄生率が高いです。
臨床症状
寄生を受けても特に臨床症状を示さずに経過する例も多い。しかし、消化管内に寄生する成虫により、しばしば下痢が発生し、嘔吐をみることがある。このほか、食欲不振や元気消失、被毛粗剛、発育不全、腹部膨満がみられたり、神経症状や運動障害を認めることがあり、これらは特に幼犬の重症例で観察される。さらに幼犬の小腸内に多数の成虫が寄生した場合には腸閉塞を起こしたり、また、時に胆管に迷入して重篤な症状を発現することがある。
一方全身の組織に寄生する幼虫によっては、一般に臨床症状を示すことはないが、時に肺炎の原因となり、発咳や呼吸困難、発熱等を起こすことがある。
診断
糞便中から犬回虫卵を検出することにより診断する。犬回虫は一般的に散乱数が多いため、糞便検査では直接塗抹法で十分である。更に浮遊法を行えば、検査の信頼度は更に上がる。なお、単性寄生(メスのみ、雄のみ)や未成熟の寄生の場合、糞便中に虫卵を証明することが出来ない。また、組織中に寄生する幼虫を検出することも通常不可能である。
類症鑑別
犬回虫と同様の症状を発現し、虫卵が犬回虫と類似の形態を示す寄生虫に猫回虫と犬小回虫がある。
治療
- ピペラジン
- パーベンダゾール
- フルベンダゾール
- ミルベマイシン
- パモ酸ピランテル
などがあります。
人畜共通寄生虫としての犬回虫
犬回虫の成熟幼虫形成卵をヒトが摂取した場合、幼虫が全身の様々な組織に寄生することがあります。
すなわち、この場合ヒトは犬回虫の待機宿主となり、幼虫内臓移行症を発症します。