犬の甲状腺機能低下症
犬の甲状腺機能低下症
病因;何らかの症状が発現するのは甲状腺の75%以上が破戒されてから出る。二次性のは下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生あるいは分泌異常により起こるがこの機序によるものは5%以下。
原発性(99%):リンパ球性甲状腺炎(50%)、特発性甲状腺萎縮(50%)、腫瘍
2次性 :下垂体の形成異常、下垂体の破壊
臨床症状
年齢;若齢〜老齢(若齢ではメスに多い、高齢では性差はない)
後天性甲状腺機能低下症はどの犬種でも見られるが、チャイニーズシャーペイ、チャウチャウ、グレートデン、ラブラドール、ドーベルマン、アイリッシュウルフハウンド、スパニエル種が羅漢しやすい。
・細胞代謝における変化: 元気消失、意識混濁、体重増加、寒冷地不耐性
・繁殖に及ぼす影響: 雌;不妊、発情周期の延長、不全、出血の延長など
雄;性欲の欠如、精巣の萎縮
・皮膚の変化:
顔の変化;悲劇的(まぶたが腫れるため)
皮脂の分泌が増えるため指間皮膚炎になりやすい。
皮膚が肥厚(ほぼ必発)
皮膚の乾燥、落屑、粗毛、両側性対照性の脱毛、鼠の尾、子犬のような被毛
色素増強、油性脂漏、乾性脂漏、粘膜水腫、膿皮症
・心機能の変化: 徐脈、不整脈
・眼に及ぼす影響: 角膜への脂肪沈着、角膜潰瘍、ブドウ膜炎
・行動の変化として歩きたがらない、頚部痛(特にビーグルでは脱毛が少ない)など。
・甲状腺機能低下症からの食道拡張症は起きても軽度。
・最終的には粘液水腫性昏睡にいたる。
鑑別診断
副腎皮質機能亢進症、セルトリ細胞種、性ホルモン性脱毛症、皮脂腺炎、周期性脱毛症、毛包形成不全症など
以上は教科書的なお話です。
症例1
11歳の雄のトイプードルです。
甲状腺の治療数ヶ月後には
この子は元々は眼窩下膿瘍が治らないということで転院されてきましたが、膿の発生源である歯の抜歯と甲状腺の治療によって完治しました。
毛もフサフサになりまるで別人(犬)のようですし、今までは散歩していても後ろをトボトボ引っ張られていたのが、飼い主さんを引っ張って歩くようになったと喜んでおりました。
症例2
13歳 トイプードル 雌
来院時の主訴は歩けなくなった、ということでした。
確かにレントゲンでは椎間板がつぶれている像もあるのですが、典型的な症状とは違いました。さらに詳しくお話を伺い以前から高脂血症の治療をしていたことや軽度貧血等々から別の病気を疑い血液検査を実施すると重度の甲状腺機能低下症ということが分かりました。
甲状腺ホルモン剤を投与後2週間後には昔のように普通に歩けるようになりました。
当院では椎間板ヘルニアの手術を多数行っているため紹介されて来院されたようですが、このように甲状腺ホルモン低下症による起立不能ということもあるので注意が必要です。もちろん甲状腺の治療に伴って貧血も高脂血症も改善しました。